#103.世の中はよくできている

 ラジオが「あなたにとって、贅沢とはどんなことですか」と聴いていた。午前中の雑事をしながら考えてしまう。ふたつ隣の街までもやしそばを食いにいくことか、まだまだ高値の苺買って燻製合鴨スライスに合わせシャンパン飲むことか、ほしくてタイトルを書き留めた紙を壁に貼り付けてあるDVDを一気に買うことか。いずれにしても自分の小ささを認識した次第であった。
 毎日飲むビール、真正ものはド頭の一缶か二缶。あとは発泡酒なのだ。発泡酒のほうが安いからね、酔っぱらっちゃえば味なんかどうでもよくなっちゃうんだから。これ、長年しみついた習慣。小さいよな、やってることが。
 ことしの豊洲初競り一番マグロが5億円超であった、とのこと。釣り上げたのは大間の漁師さんであったようだ。弟と息子と三人で釣ったのだと。
 どうせ、仲買人等にさんざん懐されての手取りであろうとの予想に反し、本人に8割方入るのだそうだ。4億円ですよ。すごいじゃないですか。税金で半分取られたとしても、2億円も手元に残るのね。
 事業元にその半分をプールして、残りの1億円を自分と漁に同行した弟と息子に、それからおかみさんにも特別手当をあげなければならない。その日はたまたま同乗しなかった漁師も頭数に入れてあげなければならないし…。いつも船の修繕をやってくれている辰爺のことも考えてやらなければならない。辰爺には親父の代から面倒みてもらっているのだから、てなものだろう。
 漁協の仲間への祝儀はどうしたらいいのだろうか、祝いの宴の手配もあって大忙し。けっきょく自分には1千万円も残らない。来年の確定申告後に加算される地方税も怖そうだ。そうか、そうであるのか、とため息が出ることであろう。
 日本中で騒がれて、マスコミの取材対応には辟易。漁師仲間のやっかみも耳に痛いし、当分は漁場でのいやがらせも心配だ。ただ、この人、何年か前にも一番マグロを釣り上げていて、事後のできごとには経験があるのだ。なので心配は無用だし、だいいちこんな話、余計なお世話だよな。
 落札されたマグロは寿司チェーン店で客に振る舞われたそうだが、通常価格のまま、であったそう。仕入れ値としての採算は合わないだろうが、そんなの帳簿上のマジックで節税対策になるはずだ。要は、チェーン店の宣伝行為なのだな。効果絶大であることだろう。世の中、まったくよくできているのである。
 そういえば、もうすぐ確定申告の季節。帳簿作りが大変だ。そんなもん日々やっているわけではないので、一年分大量のレシート領収書を日付順に整理してホチキスで止めなければならない。う~ん、安いため息が出るぜ。マグロどころかフナ一匹釣ったわけでもないのにな。
 虚し悔しくても、近所のスーパーでタイムセールのしめ鯖でも買って食うのがせいぜいがとこ。一缶目はビールだけれど、二缶目は発泡酒。だいぶ寒くなってきたから、あとは芋焼酎のお湯割りでくだを巻くしかないのである。