#100.やさしくやってもらいたいもんだ

 風邪をひいてまいってしまった。そういえば去年の師走にも同じようなことがおこり、酒を飲まない日というものをすごしたことがあった。今年は飲めたけれどね。でもおいしくなかった。
 たしかに、むかしは、必ずといっていいほど元日から風邪症状で寝込んでいた。大晦日のNYRFに出させてもらっていたので、それが終わるまで風邪などひいていられぬ緊張感とわくわく感が継続していたのだ。その一大イベントが終わるとともにこと切れる、そんな状態だったのであろう。NYRFには出演しなくなったので、前倒しで、師走早めの風邪ひき習慣ということか。
 今回も、念のため病院へ行ってみた。コロナ、インフル罹患を疑ったからだ。
 臨床検査師の可愛い女の子が、それこそ20㎝もありそうな綿棒を持って登場。マスクを鼻下まで下げて上を向け、というのである。この検査でコロナ&インフルの検査ができる、とのこと。そして、いきなり左鼻穴深くロング綿棒を突っ込まれた。うっ、とのけぞりそれを中断させると「がまんしてくださいね、そうでないと正確な検査結果が得られませんよ」とのこと。そして間髪おかず右鼻穴深くに再挿入。可愛い顔してなかなかのS行為なのであったが、反射的に女の子の手を払ってしまった。
 むかし、歯科医師の胸倉をつかんで「出禁」になったことがある。「いてーよ、このやろう」となってしまったのだ。当院ではそのような患者さんには対応できませんから状態なのであった。それを思い出し、今回はその女の子の顔面を睨みつつもなんとか我慢。結果は両者陰性「熱もないのに来ないでください。さもなくてもインフル患者であふれかえっているのですから」と若い医師に怒られてしまった。熱測っていないのですか?と。おれは男だから妊娠の心配なんかしてないし、検温の習慣などない。だいいち体温計なんて持ってないもんね。
 そういえば、「いてーよ、このやろう」などと言っていられない事態の経験もある。どうしても右手指の痛みがひかず、レントゲン撮影の後に何ら前説もなく骨折してズレていた指の骨を正常位置に戻された際であった。痛みを通り越して即座に失神した。
 そばで見ていた連れの女が笑ったとき、医師が「笑いごとではない。それほどの激痛なのだ」と叱責した。それを、覚醒しつつある意識に漂いながら聞いていた。なぜか、とてもいい気持ちなのであった。だから、その医師の胸倉をつかむことはなくて済んだ。その医者、粋だよね。はっきりしていて堂々とした医術だ。
 酒がまずいのはつまらないが、痛いのはもっと勘弁だな。どうぞ何卒ご容赦くださいの最上級だ。そんなのだったら、何の前説抜きでいきなりやってほしいのね。それが「やさしさ」ってものだろう。不謹慎なもの言いなのは百も承知。
 インフォームドコンセントなんて無粋。痛く苦しい思いをしてまで延命など望まない。さっさと瞬殺、即死を望むのですよ。強く、ね。