大阪に住んでいる後輩、歳が20以上も違う奴に「貯金一千万なんて普通でしょ」と言われて何年かたちました。…そうか、そうだったのか。おれよりも親子ほど年下の奴が一千万円も貯金しているのか、と反省し金を貯めるようになっていったのでした。ちなみに、そいつは男独身。
これまでずっと、そいつが上京する交通費&宿泊費やらを振り込んでやったりしていたのです。ばかですよね、金なんか持ってないだろう、と思っていたそいつが一千万も金持っていたのですから。もちろん、そいつと会えば、飲み食いも全部おれ持ちでした、ずっと何年もね。くやしくて腹が立ったので、直近に振り込んでやった4万円を口座振り込みで戻させました。もう付き合ってなんかやらねーぞ、ばかやろう。
それからしばらくたって、やっと幾ばくかの貯金ができました。けれどそれは一千万円には程遠い金額なのです。だって、一千万円って、仮に月々10万円貯金して8年強もかかるのですよ。中学三年生だった娘が23歳になって社会人になるような年月ですからね。かなりの辛抱が必要、難しい問題です。
そんなある日のこと。妹が「ミニクーパー」を買いたい、と言いだしました。
殊勝な妹は、メルセデスを新車で買って20年乗り続けてきました。えらい、と思います。ものを買って使って、それを限界まで使い切ったのですから。塗装がヘタり、ミッションがガタつき、インパネ表示板に重篤なエラー表示が現れ、ついにはルームミラーまで剥がれ落ちてしまったそうです。そして、次は「ミニクーパー」だと言うのです。
「ミニクーパー」を購入するのは難事、ということを知っていました。購入行為が、いわゆるポルシェ・スタイルなのですね。911は高額だけれど、その実すべてオプション累積価格らしいのです。それこそ、パワー・ウインドウにしますか?サイド・ミラー折りたたみは電動にしますか?ハンドルをパワステにしますか?足周りペダル類はどんな装丁にしますか?インパネの配置はどうしますか?座席シートは布ですか本革ですか?的に。だから、車体自体の価格は以外に安くても、気づいたら高額になっている、という仕組みのようなのです。
「ミニクーパー」も同様で、まるでブティックに行って上から下までトータル・コーディネートするように、車の隅々パーツまで自ら選択しなければならない。ということは、選んでいけばいくほど、どんどん累積価格が高騰していく。そういう事情を説諭しました。国産車でもいいのではないか、と。が、妹は頑として「ミニクーパー」購入を主張したのであります。
そうか、そこまで言い張るのなら、おれも付き合ってやるぞ。おまえの残りの車人生を「ミニクーパー」で全うしろ、はっきりしていていいではないか、堂々としたもんだ、となったのです。こうなったら、おれもその購入計画に向き合ってやろうではないか、と。 つづく