#091.マイクロ野郎にやられた週末、下

 「あんたね、ちゃんとやらなきゃダメだよ。後回しにするのはね、あんたの悪い癖だよ。だれも助けちゃくれないよ」と死んだお袋に言われて目が覚めた。
 案の定、ラップトップPCは固まったまま、昨晩の状況からひとつも変わっていないのであった。トホホ状態。
 やがてそれが腹立ちに醸成されてくる。よし、それではということで、更新の済んだサブPCでさんざんネット検索してみた。がしかし、専門的なことなど理解できるはずもなく、そんなことが解釈できるのなら初めから自分でやるし、甥などに頼みはしないのだ。腹立たしさは募るばかりである。
 ただ、よくわかったことがひとつ。世間にはおれのようなド素人が多いこと多いこと、皆みなしてドツボにはまっているのであった。散見するのは苦悩、失望、愚痴の集積。こんなこと日本中でやっていて、…いや、世界中でやっているのだな。地球規模で人類をこのような状態にして、よく暴動でも起こらないものである。人々は、完全にMicrosoft社の屈辱的囚われの身なのだ。
 なんとなく見ていた甥の方法ではなく、更新作業をアシストしてくれる機能があることを発見。さっそくこの機能をPCに入れようと試みたのだが、これにもまた長い時間を要するのであった。ときどき現れる「これには数分間かかることがあります」のメッセージ。数分間とは、社会通念上5、6分を意味するのではないか?…すでに40分はかかっているではないか。そのもの言いは、あまりにも不親切ではないか、人間味を感じないぞ。…そうか、そうだった、こいつは機械なのであったな。さらに増す腹立たしさ。
 タバコがなくなってしまった。買いに出ようとも思ったが、朝起きたまま顔も洗っておらず格好もボロい。タバコ連続吸いと腹立ちで空腹ではないが、出かけを躊躇ってしまう。
 進捗状況を示す数字を見つめていてもなにも変わらないのはあたりまえ。腹が減った感はないのだが、アルコールへの禁断症状が現れ、やむなく顔を洗いマスクにキャップ姿でコンビニへ行ったのであった。コンビニでの食い物買いには不慣れなので、余計なものをさんざん買ったにもかかわらずクソまずい酒飯となった。腹立ちは増すばかり。
 気づけばすでに夕方6時を過ぎている。にもかかわらずマシンはまだそのまま。「更新プログラムをダウンロードしています」などとのんびりこいているのである。
 サブのPCでYouTubeなど観るのだが、気分は滅入るばかり。こんな思いを世界中でしているのか、と考えればこれも致し方なしと言い聞かせるのだが。
 それにしても、まったくくだらなくつまらない話を書いているようで、ほんと腹立つわ。まんまとマイクロ野郎にやられてしまったのだが、いつまでたっても作業終了の目処など一切見えないのであった。