#050.自然冷却のビールはうまいぞ

 今期の冬は寒い。これを書いているのは2025年頭の東京都である。天気図を見れば一目瞭然で、北信越日本海側は真っ白に塗られていて大雪状態、それが草津みなかみあたりまで迫っている。そこに北風が吹くのだから、南側の関東平野は寒いに決まっている。ラニーニャ現象で、寒冬暑夏だとよ。
 地域差はあるのだろうが、昨年末に、青森県の酸ヶ湯で「観測史上初、12月に積雪3メートル超」などとニュースしていたのだから、ほんとに寒い。
 酸ヶ湯には、高校二年晩秋の修学旅行で行ったことがある。通った高校通年の旅行先は京都府を中心とした関西であったのだが、一年先輩が旅先でなんらかの問題をおこした。その割を食った我々学年が東北方面に所払いとなったのだ。  
 がしかし、それがよかったのである。八戸、奥入瀬、大鰐、弘前の美しい居住まいは、いまでも脳みその奥底に残り続けている。すっごく寒かったが、ご飯がおいしくて、温泉が最高だった。湯上りの缶ビールが最高。宿周りを散策して自販機のそれを飲んだのね。夕飯時、担任の教師に「…おまえ、ずいぶん顔が赤いな。湯あたりしたんじゃないか」などと言われて笑えたものであった。
 近所の、墓所の水鉢部に置くカップの水も完全凍結したのが昨年12月中旬だった。暖冬時には、1月大寒のころにやっと薄氷といった具合だったのにもかかわらず、だ。乾燥もひどい。雨などあまり降っていないのだから、もっともだ。
 そうなると怖いのは、春先日本列島太平洋側のドカ雪ではないか?と心配になってしまう。ドカ雪→歩道に面した門前雪かき4件分→史上最大級の下肢腰痛感更新→リハビリ後、通常復帰に一週間…となるからだ。
 そういえば、何年か前に、毎週ドカ雪という年もあったしな。近所に年寄りが多いので、おれが4件分やるのよね。戦々恐々ざんす。
 とはいえ、悪いことばかりでもない。昨年夏に、仕事場の冷蔵庫が冷えなくなっていた。…そのうち直るだろう、などと考えていたのだが、いっこうにその気配がないまま月日が流れてしまった。
 そこにきて、この寒さ低温期を迎えたのである。つまり、ビールを冷蔵庫に入れなくとも、北側玄関の冷暗所に置いておけば、いつでも冷蔵状態になったのだ。食いものだって、冷やさなくても北側に置いておけば腐りはしない。
 ただ、日中、南向き仕事部屋が日当たりで暖かい。そうすると、日々の活動範囲がこの部屋に集約されがちになる→玄関北側にはビールが冷えている、とオツムに存在し続ける→日中、その概念に支配されている→夕方、早い時間からさっさと北側にビールを取りに行って飲む…となってしまうのである。
 実は「ビールは冷蔵庫冷却よりも自然冷却がおいしい」との証左を現認したぞ。冬場にビールをおいしく飲むには、を発見してしまったのだ。こうなると、年中ビールばっかり飲んでいることになってしまうが、この世の終わりのようなクソ寒い冬期を乗り切るにはこのくらいの調子でいいのだね。