#039.メルカリにやられた週末

 仕事場の隅でホコリをかぶっていたトートバッグを見た甥が、「…いらないの?使わないんだったらメルカリで売ってあげるよ」と言った。
 メルカリの存在は知ってはいたのだが、その内容をあらためて見せられて驚いた。衣料、日用雑貨はもちろん、グランドピアノなども出品されている。ミニカーにしては高額だな、と思って見たら、なんと実車であった。すごいな、こんなものまで売っているのか的な品も多々ある。
 トートバッグ1万円で売れれば御の字だ、とのことで、甥は11,111円で出品した。売り上げの10%をメルカリ運営サイドに徴収されるのだそうだ。
 はたして、これがさっさと売れてしまった。
 甥は平日勤めているので、週末の午後、品を梱包して甥の住む町まで持参せよとのこと。梱包方法を教わった。
 さあたいへんだ。ホームセンターに出かけ、緩衝材を購入。段ボール箱はもらえたが、気泡緩衝材が1ロールで860円。ガムテープ1巻き460円。
 早速の梱包作業。しかし、バッグの梱包作業などやったことがいないので四苦八苦。ガムテープをべたべた貼り付け、なんとか梱包を終え、早くも疲れてしまったのであった。作業所要2時間。
 さて、この品を甥の住む町まで届けなければならない。甥は、4つ先の駅前に住んでいるのだ。両手で荷を抱えた姿がJRの待合室ガラスに映って驚いてしまった。梱包済みの荷が、なんともみすぼらしい。こんなもの両手で抱えていて、ひとはなんだと思うだろう。
 そそくさと上り電車に乗り込み、3人掛けシートがある車両連結部の隅に立った。そると、そこには2人のブラザーが座っており、サムズアップしてからここに座るかい?と手招きした。英語圏のブラザーであろうから侮辱的な意味ではないのではあろうが、気後れしてしまい、首を横に振るのが精いっぱいといったところ。3人掛けシートは体格のいいブラザー2人でいっぱいいっぱい。ボロい荷を抱えて、2人の間に挟まれ座れるわけないでしょ?
 ブラザーは、4つ先の駅到着までへらへらしながら、両手に抱えられたボロい荷を興味深げに眺めているのであった。
 駅前には甥が待っており、梱包された荷を見て大笑い。「たいへんだったね」と言い、近くのコンビニからとっとと発送手続きを終えた。
 駅のコンコースで、甥の好物である鶏の半身揚げを土産に買ってやった。これに1,280円。
 取って返して帰路についたのであるが、ドッと疲れてしまい、駅前やきとりの匂いの誘惑に敗れ大酒を飲んでしまった。
 …まあ、赤字じゃないのだろうが、メルカリにすっかりやられてしまった週末であった。