#080.リスクをとった日本政府

 この夏、セミの鳴き声をあまり聞かない。この現象、うちの近所だけかと思っていたら、比較的広範囲で起きていることだそうだ。理由は、梅雨時の少雨で地面が硬く、セミさんが穴を穿って出てこられないから、とのこと。幼虫で土の中に7年、羽化して7日の有終を飾れないのはつらいところだろう。
 少雨による水不足の懸念は全国広範囲におよび、市営プール中止の報も耳にした。子どもたちは、部屋にこもってゲームなどやっているよりは、自転車乗ってプールに行っているほうがいいのにね。健康的に腹も減ることだろうし。「えー、やってないの?」的に残念なことだろう。
 北海道北見市の後輩が、家にエアコンがなくてつらい、と嘆いていた。気温が連日40℃に迫る状態。救いは湿度の低さ、20%程度らしい。木陰にいて風が吹けばなんとか、とのこと。乳牛に点滴処方しているのだそうだ。異常な暑さ、牛さんもあのデカい図体じゃたまったものではないであろう。
 スニーカーのアウトソールが剝がれてしまった。よく見ると、接着面のボンドが透明に溶けているのだった。炎天下歩き回ったからな、異常高温、スニーカー設計者の想定を超えていたのだろう。路面温度は60℃を超える、とのこと。
 ヨーロッパも例年にない高温に見舞われているそうだ。市中に室外機の熱風が蔓延することで設置を規制している国や、ロンドンのように古い建造物を保持している地域の場合は、配管施工工事からして、エアコンそもそもの設置自体が難しいのだそうだ。たくさんのひとが命を落としている、とのこと。
 関西電力が、美浜原発の立て替え稼働に向け調査を再開した。うまく進んでも、再稼働には10年、20年単位の期間を要するようだ。
 日本政府は、2011年の福島第一原発事故以降「可能な限り依存度を低減する」との原発位置づけを「最大限活用していく」との方針に転換した。その理由として挙げられているのが、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにしたエネルギー価格上昇。電気代やガス代等エネルギー価格が高騰すると諸物価に影響し、国民はブーブー言うもんな。中には太陽光、風力、地熱等自然エネルギーにシフトを、などと声高に唱えるひともいる。しかし、自然エネルギー技術が発展途上のものであって、安定性に欠けるのであろうことは想像できる。だから、政策としてはあてにならないのだろう。曇天続きだったらどうすんの?風が吹かなかったらどうすんの?的に。革新的蓄電技術を構築できたら、ノーベル賞ものであろうな。
 そして二番目の理由、AI普及に伴うデータセンターの増加などで電力需給の拡大が見込まれるから、との事情。どこもかしこもAIだもんね。…そうか、だからデータセンターが大量に必要なのか。政府は「エネルギー政策」で、リスクをとったのね。原発問題は賛否両論、日本では特に大きな問題になりがちである。議論は大いに結構なこと。脱原発の意見にもうなずける。しかし、原発やめてどうするのよ?に建設的明解な答えを示してくれるひとはいない。