#078.木を切るということ

 前回コラム、国営昭和記念公園の総敷地面積が約165.3haであるということにつづけての話。 
 昭島市北部から立川市北西部に跨って「昭和の森」という地域がある。そこにはゴルフ場とホテルがあった。それを、運営会社がハゲタカ会社に売って、さらにそのハゲが転売した。大元の簿価88億円が1300億円になった、とのことだ。
 総敷地面積約65ha。ここに日本最大級のデータセンターや物流センターが建設されるそうだ。ちなみに、東京ねずみーランド面積は約51haとのこと。
 一部、反対運動はあるものの、それが盛り上がっていない。そりゃね、ハゲに売ろうが、そのハゲがだれに転売しようが、地権者の財産なのだから理にかなっているであろうことはわかる。
 しかし、どうしてもぬぐえない違和感は開発の際の「木を切る」という行為だ。この65ha「昭和の森」内には約4800本の樹木があって、そのうち約3000本もの樹木が伐採されるのだそうだ。樹齢だってハンパないものが多いことだろう。
 だけど、この問題、こないだの都議選のときだって今回の参院選でだって「争点」にしていたひとはごく一部だ。薄~く。それも、主に言われているのは、交通渋滞、騒音、振動等が主なものだった。
 このゴルフ場、飛行場用地としてアメリカに接収されていたものを1969年に返還してもらって開設された。その時点ですでに樹木伐採行為はあったのだろうが、ここにきてさらにまた切ってしまう、ということだ。
 行政も無力。物流輸送車交通量増加予想に伴い、近隣小学校通学路の安全を確保配慮ください、という意見書を出すのがせいぜいなところ。
 前回の都知事選時、約30ha神宮外苑再開発に伴う樹木伐採問題もそれほど盛り上がらなかった。蓮舫さんが見直しを公約にしたけれど、ダブルスコア以上で落選だった。だから、こういった自然保護等問題は選挙の争点には不向きである、との指向性なのだ。だから、近々のそれぞれ選挙でも話題にならなかったのだ。
 それでも、都知事選後、日本イコモスが騒いだら神宮外苑については樹木伐採数が見直され、さらに植樹数が増え、緑地面積が5%増加との計画に変わった。
 日本イコモスは、歴史的建造物や遺跡保存に関わる組織だから、100年の歴史がある明治神宮外苑再開発にものを言ったのだろう。それにくらべ「昭和の森」は歴史的遺産とはいかないかもしれない。しかしこの地、北部に玉川上水が隣接しているのだ。鬱蒼とした木々の森は、玉川上水の森に繋がっているのである。江戸の民の生活用水として上水を引いた玉川兄弟の立場はどうなるというのか。
 さらに、小池さんが旗振りしている「クールネット東京」ゼロ・エミッション構想にも沿わないではないか。カーボンニュートラルじゃなかったのかよ。
 データセンター、物流センターは需要があってつくられることはわかるが。
 せめて、神宮外苑同様に、緑地面積を増やせよな、と言いたいところだ。