コラムなんか書いて公開するようになったら、いろいろな問い合わせをもらうようになっている。そのなかで、ひとつおもしろいものがあった。「…ロードクルーやってもらえませんか」というもの。
何度かやり取りしたところ、どうやらその方はsaxophonistで、けっこう活躍している。名だたるボーカリストのサポートメンバーだったり、スタジオワークも多くあるようだ。現場には、主にテナーとアルト、2本のサックスを持って臨むのでそのどちらかを持って各現場に帯同してほしい、とのこと。
「車の運転はできますか?」できますよ、酒を我慢すれば。「まだ現場にかかわっていますか?」まあ、すくないなりにもね。「サックスのことおわかりですよね?」ええ、うちのメンバーにもサックス吹きが何人かいますから。「事務所とか通さずに、直でやりとりできますか?」OKですよ、面倒くさい縛りなんかありません。「それと、喧嘩はつよいですか?」…えっ?け、喧嘩ですか?
この方、おれのむかしのステージを見たことがあるそうだ。でもね、それは大むかしの徹底青春的ガルルルBAND時代のことでしょ。その思い出話をコラムに書いていたりしているから、いまでも変わらずにガルルル強喧的だと思い込んでいるようなのだ。
そうか…。「ロードクルー」なんて言ったって、要は「坊や」さらには「ボディーガード」役も兼ねて、という要望が見えたのである。いまだに荒っぽい現場があるようなのだ。
でもね、「坊や」にしてはずいぶん大幅に歳をくいすぎているし、コラムに散見する好戦的シーンは、あくまでも与太話のネタにすぎないのですよ。もうファイトなんかしちゃいませんって。そんなわけないでしょ、とした。
こうしてやり取りしたのもなにかの縁ですよね。違ったかたちでお役に立てることもあるかもしれません。なので、今回のお申し出はなしということで、としてお断りした次第であった。
今回の件で、大きく反省した。…そうか、あんまりカッコつけたことばかり書いているのはマズいな、正直ではないな、と。
たしかに、コラムに思い出話が絡むと、それは面白くて爽快なシーンとして書いてしまいがちだった。それがウソ作り話ではないにしても、限られたスペースの中に書くわけだから、その裏側にあった「痛み」や「惨めさ」は後回しもしくは回避してしまっていたのだ。
いい歳こいたので、当時の派手なイメージ表現はその実、弱さの象徴でもあったのだ、と既に承知しているわけでもあるのだから。いけないいけない。
なので、これからは、そういう悲惨な回顧も記すようにしよう、と存じます。
よーくよく考えて、指折り数えてみても、生涯戦績2勝5敗3分け。大きく無残に負け越しているのですから。