#040.まいった狸は目でわかる

 巨人がCSで横浜に敗れ、すっかりまいってしまった。もう、毎日の張りを失ってしまったかのように脱力している。
 ああ、巨人ファンなのだな。それも、かなりの、と久方ぶりに思い知った。いや、もしかしたら季節の変わり目による体調不良か?それとも、ただ単に己の老化現象か?と思えるくらいにだ。 
 日本シリーズや、大リーグ大谷&山本くんの活躍さえどうだっていい、という感じ。来シーズン、どこかよそのチームに行くと噂の菅野くんや岡本くんのことにもまったく興味が湧かない。要は、誰であれ選手が巨人のユニフォームを着ているか否か、が前提条件であったかのようだ。それくらいの巨人ファンだったということだ。なので、プロ野球の個人的今シーズンはここでおしまい。
 とはいえ、阿部監督は就任一年目にかかわらず、見ごたえのある試合をたくさん見せてくれた。ここ数年、いやもっと長い間ぬぐえなかった巨人戦の大味感を刷新した感がある。そこには、かつての野村さんや星野さんに見ていたビターな采配があったようにも思える。阿部監督はやるではないか、と。選手起用の機微、頭脳的戦略、巨人には珍しく選手補強もうまくいっていた感があった。ひいては、令和世代プロ野球のおもしろさを堪能できた。
 それにしても、横浜とのCSは巨人ファンとしては、冒頭から嫌な雰囲気が漂っていた。それが一戦ごとに表出し、如実になっていったのだ。それは、阿部監督と三浦監督の顔面にうかがえた。
 三浦監督は、終始ベンチに腰掛け泰然自若。その両頬は日を追ってコケ始めてはいったものの、ある種哲学的なものにさえ見えた。画になっていた。
 それに比べ、阿部監督の表情にはシリーズ冒頭から絶えず「不安」が漂っていた。敗戦が増すにつれ、目が泳ぎ始め、やがて虚ろにさえなった。終盤には、充血した目が涙目にさえ見て取れた。
 かなりのプレッシャーがあったということか。日テレが、CS敗退決定直後にTV番組をシャットアウトしたところにもそれが垣間見られる。あれだけしつこく地上波とBSでリレーしていた放送をバッサリ切ってしまった。編成サイドとしては怒り心頭といったところだったのであろうか。
 一勝のアドバンテージを得てのCS、日本シリーズ進出へは大いに有利であり、進出後の番組編成や興行収入の皮算用が崩れてしまったのだろうから致し方なしといったところか。組織の大きさや強さを、阿部監督の顔面が映し出していたのである。
 「まいった狸は目でわかる」とは、よく言ったものだ。
 ことわざか?と思って調べてみたら、そうではなかった。捕まりそうになった狸が観念して諦め、その目つきがキョトンとして、やがて飼われた、という川柳と同義に用いられているのだそうだ。