#011.令和の上京物語

 ウグイスの鳴き声で朝早くに目を覚ますようになっている。もう毎朝、判で押したように5時30分。
 たぶん、同じ奴が鳴いているのだと思われる。なぜそんなことがわかるかというと、そいつ鳴きかたが下手くそ、「ホーホケキョ」とちゃんと鳴けるのは半分くらいなのだ。「ホー…」と始まって「…ケキョ」までちゃんと鳴ききれるのか?と気になってしまい、結果、それを聞いていて目が覚めてしまうという具合。
 どこから渡ってきたのか知らんけど、今年のウグイスはまだ若者のようだ。奴ら繁殖期のメスを求めて一日に1000回も鳴くそうだ。
 そうか、野郎まだ練習中か、ちゃんと練習して、さっさと上手に鳴けよなといった感じだ。
 北海道北見市の後輩が、実家の事情で東京を離れることになった。半同棲で付き合っていた彼女としばしの別れになるとのこと。当面は遠距離交際になるけれど、また東京に戻ってきます、と。
 彼女も一緒に連れていけと言ったら、北見に仕事なんかありゃしませんよ、とのことだった。
 北見市内へは女満別空港からさらに1時間を要するようで、航空券も高額だし、おいそれとは行き来できないのだろう。もともと北海道から上京して恋愛していたのだから、こういった場合の覚悟もあったであろうが、切ない別れになることだろう。令和の上京物語、終盤シーンだ。
 と思いきや、当のふたりがあっさりしていて、決して深刻でないのに驚いた。リモートで金もかからずしょっちゅう会えるのだそうだ。だから、それほど苦にはならないとのこと。
 「北の国から」で、純くんとれいちゃんが遠距離で付き合っていて、事前電話申し合わせのうえ、同時刻に同タイトル映画を観るなんてことをしていた。ほのぼのとロマンティックで、こころ温まる行為だけれど、当人らにとってはやるせなかったことだろう。その趣向をIT技術の進化が薄めてしまったのか。時代は移ろったのであった。
 この話を人にして教わったのだが、「ウグイス」は留鳥とのこと。渡り鳥ではないのだそうだ。スズメとかと一緒で、一年中ほぼおなじところに暮らしていて、季節になって移動してくるわけではないとのこと。
 なんだ、そうなんだ。野郎、地元の奴だったのか的だ。