最近の子供たちの「買い食い」事情はどんなもんなのだろう。町の駄菓子屋なんてなくなっちゃったからコンビニで買うのだろうけれど、そのコンビニ前で子供たちが集って飲んだり食ったりしているところなんてあまり見かけない。まあ、子供の数が少なくなっているからなのかもしれないけれど。
学校が禁じているのか、と思いきや、トラブル防止のため「お金の貸し借り」や「おごる・おごられる」を禁じていても「買い食い」を禁じている学校は少ないようだ。「買い食い」は家庭教育の範囲だから、とのこと。
むかしは、学校が「買い食い」を厳しく禁じていた。禁じられているからこそ、それはもう魅惑的行為として買い食ったものだ。
名前なんか忘れてしまったけれど、ピンク色の薄い煎餅みたいなものに真っ赤なジャムみたいなものを塗って食べるやつ。ビニールのチューブに入った青赤緑色の液体を吸うやつ。食うと口の周りや歯が真っ黒になる謎の麩菓子などなど。学校で禁じられていても、駄菓子屋の軒先にはいつも子供たちがたむろしていたものだった。
ただ、それを妹に見られるとお袋にチクられるのが怖かった。そうすると、お袋に理詰めで怒られ、言うことを聞かず繰り返すとお袋が親父にチクり、さらに繰り返すと親父にブッ飛ばされるということになるのであった。
何もこれは「買い食い」行為に限ったことではなく、いつしか妹の戦線布告のせりふとして「お母さんに言っちゃうから」が恐怖化した。妹は、日常生活の些細なことでも気に入らないことがあると、すぐに「お母さんに言っちゃうから」と言っていた時期がある。
学校で立たされたり、通学路で燕の巣を棒切れで突いたり、ランドセルほっぽりだして遊んでいたりはもちろん、お兄ちゃんが悪口を言ったとか消しゴムを取ったとか、いちいちチクられていた。
お袋が怒り、それが親父の怒りに派生し、悪化するとおれがブッ飛ばされる流れを妹は楽しんでいた節がある。ブッ飛ばされたおれは、本当に宙を飛んでいた、と妹が後に述懐している。
もう誰からもそんなこと言われることもないし、親父にブッ飛ばされることもないのだが、いま考えてみても「お母さんに言っちゃうから」は、やや怖いのですね。