大竹幸尚コラム、スタート#001.健さんとの約束

 夕方、酔っぱらってタバコを吸っていたら、雲ひとつない北の空高く東から西へ飛行機の点滅ランプが流れていきました。すると、さらにその遠方に、やや黄色がかった光が見えます。どうやらその光は西から東へ動いているようでした。
 人工衛星か?…人工衛星なんて、今では1万数千個もあって、年々千個以上も増えているそうだから驚きもしないのですが。
 今から四十数年前、健さんに「もし、おまえがこの先どこかで与太っているという噂をちょっとでも聞いたら、おれは絶対許さないぞ、いいか」と言われました。さむーい寒い、みぞれ混じりの雨が降る夜のこと。
 健さんはスクリーンの中でそう言い、おれは客席で約束したのです「わかりました」と。一緒に誓わされた三浦さんは真面目になって、池中玄太でカメラマンやってましたよね。
 それなのに、このおれときたら、これまでずっと与太ったままの人生でした。
 「生きていてよかった」という歌の節がありますが、よかったかどうかはわかりません。ただ、「生きていてわかった」ことは少しずつ増えているような気がします。
 よった与太なりにも、ちょっとずつわかるようになってきた。いや、もしかしたらそれは老化によるものなのかもしれませんが。困ったもんです。
 いい歳こいて「週刊コラム」なんてことを始めることになり、今回がその第一回です。
 根が与太ってますから、本当にちゃんと週刊でやっていけるのか?なんてまったくわかりません。約束できません。それでも、よた与太しながら、いろいろな話ができたらと考えているわけです。
 二本目のタバコに火をつけてもう一度、北の空を見上げたところ、さっき東に動いていると思った黄色い光はまだそのままそこにありました。星でした。
 夕方、まだ早い時間から酔っぱらっていて困ったもんです。